「誰もが知らないうちに置き去りにしてきちゃうんだろうよ・・・

なにしろそれを手にしてる時はわかんねーんだからよ

二度と戻らない時間の中にある景色だから輝いて見えるだけかも知れねーけどよ

でも昔のことだけ輝いてるってのは悲しいじゃない

だから日々こうやって足掻いて街ゆく人々の群れが絶えねーんだろな」

店内に一つしかない窓に目を向けマスターが呟く。


『そういうのが青春って言うやじ?』

104氏が言葉をはさむ。


「わかったようなクチきいてんじゃねーよ

だいたいお前は最中だろーが」


『失敬なっ!途中のヒトやないやわいね!』


104氏がバー<<Joke at the time>>を訪れてから幾度となく降って湧いて消えて往く会話の一部である。


「悩みのタネ探して一生懸命に栄養やって花咲かせて

満足のいくとこまで育て終わりゃ次の悩みのタネを無理くりにでもみつけてくるんだろーな」

窓の外を眺めながらまたぽつりマスターが呟く。


『誰に言うちょるやわいね?』

「死生観を見つけられない奴らにだな」

遠い目のまま答えられても104氏は困り顔だ。


『暗い!暗いやわいねっ!酒が不味くなるわいやっ!

なんね?死生観ってなんね? 見つけとる奴が偉いわけ?』

酒は明るく飲むものという銘をもつ104氏がマスターに絡む。

絡んでる時点で明るい酒もくそもないだろーに・・・という突っ込みは無用らしい。


「俺が作る酒は美味い、それは話のネタに左右されないね

コケた日でも負けた日でも俺の酒は美味いのさ

勝った日にはことさらに美味いんだけどな」

『この利かん爺がやわいね』

「はいはい、そういうのは勝ってから言いなさい」

『うぬぅ!いまに見とれやわいね!!

美味い酒? 超絶な走り?

一切合財乗り越えたるわいやっ』


「いつまで待てばいいんだろな

退屈過ぎるお前の酒の味や、平凡過ぎるお前の走りが

俺に死生観やら窓の向こうのとるに足らない人々のことを考えさせてんだーよ」


マスターと走りに行っては負けて<<Joke at the time>>に帰る日が多い。

双方のマシンのガスは負けた方が負担するルール。
勝利の美酒の献上も負けた方が差し出すルール。

『うぬぅ!搾取され続けてばっかりやわいね!』


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